「大和の朝は茶がゆで明ける」・・・・・・生活に密着した郷土食・茶がゆは、おみやげではなく、奈良現地で食べる名物料理の代表格。食を通して、奈良の人の生活を体験できる、観光旅行にはもってこいのローカルフードです。
素朴な庶民派郷土食
茶がゆは、ほうじ茶を袋に入れて、お米や冷ごはんといっしょに炊いた、素朴な郷土食。見た目も味も素朴そのもので、何のインパクトも華やかさもありません。ただ、それがむしろ、庶民の生活に密着した「リアルな郷土食」という感じがして、旅行者にはうれしいところ。昔から「おかいさん」と呼ばれて、日常食として親しまれてきたそうです。
おかゆというと、ごはんが半分溶けかかっていて、ドロッとしたイメージ。でも、奈良の茶がゆは、お米が崩れるほどしっかり炊かないスタイルで、おかゆのわりにはサラッとしていています。ほうじ茶の香ばしさもあって、さっぱりといただける感じ。旅の朝食にもってこいだし、夏の暑いときや食欲のないときにも向いていそうです。
食事処や宿で味わう「よそ行きの茶がゆ」
観光客が茶がゆを体験するには、奈良の各食事処や宿の朝食で、というのが普通。ただ、お店によって差はあるものの、観光客向けの店の茶がゆは、どこも洗練された感じ。中には、興福寺境内にある「塔の茶屋」の「茶がゆ懐石」なんていうものもあります。旅行者が「ホンモノの茶がゆ」を食べようとすると、なかなか難しいようです。でも、旅行らしい「食の異文化体験」は楽しめます。
大仏・お水取りとのかかわり
奈良時代に大仏が造られたとき、民衆はおかゆを食べて米を温存して協力したそうで、それ以来、奈良では茶がゆを食べるようになったとか。また、奈良時代から1回も途切れず続いている、東大寺の修二会(お水取り)がらみでも、茶がゆが練行衆(参加する僧侶)の献立の記録に残っているようです。さすが奈良の名物、エピソードも一級。
そんな深い歴史を持ちながら、やっぱり庶民派の素朴さが魅力の茶がゆ。食事の名物があまりない奈良で、「奈良らしいもの」を食べたいと思ったら、ぜひ食したい一品です。