奈良名物「お菓子部門」で独特な存在感をかもし出している、その名もユニークな「ぶと饅頭」。由緒正しい春日大社のお供え物がもとになっていながら、現代風のアレンジも光る、古くて新しい名物です。
素朴な見た目と上品な味わい
ぶと饅頭は、小麦粉の生地につぶあんを入れて、油で揚げたお菓子。「超高級あんドーナツ」といったところでしょうか。春日大社の社紋(=藤原氏の家紋)「下り藤」が描かれた、両端がキャンディー型にねじってある包み紙を開くと、キツネ色の生地のまわりに砂糖がまぶしてある素朴なスタイル。どことなくギョウザをイメージさせる形も、また素朴なフンイキです。
かじってみると、中にはつぶあんがタップリ。ふつうのあんドーナツよりも、あんこの比率が多い感じです(ぶと饅頭はあんドーナツではないんですけど・・・・・・)。あんこタップリに砂糖までまぶしてあって、いかにも甘そうな感じですけど、これが意外と甘さ控えめ。揚げてあるわりには油っこさもあまりなくて、なかなか上品に仕上がっています。さすが高級菓子。
奈良時代に伝わった「お菓子の元祖」から誕生
「ぶと饅頭」というユニークなネーミングは、春日大社で昔からお供えされてきた神饌(神様の食事)「ぶと」から来ています。「ぶと」は、米粉をこねて生地を作って、ギョウザ型にして揚げた食べもの。奈良時代に遣唐使が伝えたという「唐菓子(とうがし)」です。お菓子の元祖、とも言えそうですね。今でも、春日大社の神職が手作りで作って、お祭りのときにお供えされています。
ぶと饅頭を売っているのは、アーケード街「餅飯殿(もちいどの)通り」にある老舗、萬々堂通則。もともと、昔から春日大社に「ぶと」を納めてきたとか。わりと最近になって、この「ぶと」をもとに、中にあんこを入れたりして食べやすいように改良して、名物「ぶと饅頭」が誕生したそうです。
奈良らしいエピソードに富んだおみやげ
お値段は、5個で1,155円、バラ売りで1個210円など、なかなか高級な感じ。あんドーナツのイメージだとなかなか手が出ませんね。でも、奈良時代に伝わったとか、春日大社のお供え物だとか、奈良らしいエピソードは満載。ぶと饅頭自体の歴史は浅くても、由来にはなかなかの「由緒正しさ」があります。このへんの話題を添えて買って帰れば、ありふれたものとは違った、オリジナリティーあるおみやげになりそうです。