東大寺指図堂(さしずどう)は、大仏殿の西側にある小さな建物。建物の前に、きれいに紅葉するモミジが何本かあります。紅葉の名所というほど本数があるわけじゃないですが、なかなかいい味出しています。
大仏殿西側のエリアは、奈良でも一番人気の観光名所・大仏殿のすぐ近くにありながら、観光ルートから外れている感じで人も少なく静か。指図堂は、このエリアでも特に大仏殿に近いところに建っています。特に古い建物でもなく、国宝や重要文化財でもなく、公開も基本的には土日だけということで、観光客がいることはほとんどありません。
指図堂前のモミジは、それほどの大木ではないですが、枝ぶりはいいです。手入れがいいのか、色づきはなかなか見事で、きれいに真っ赤になるイメージ。シックな色合いの指図堂をバックに、雰囲気のいいモミジです。本数こそないですが、印象深い紅葉景色ということで、名所といってもいいのでは、と思います。
東大寺指図堂には、浄土宗を開いた法然上人の絵がまつられています。指図堂がある一帯は、江戸時代に公慶上人が大仏殿再建のための勧進(かんじん・募金集め)の本拠地としたところ。再建用の指図(設計図)を公開したお堂もありましたが、その後倒壊。そこで、鎌倉時代に大仏殿を再建した重源上人が、法然上人に推薦されて復興担当の「大勧進職」についたという縁で、浄土宗の信者たちの援助で再建されたのが、今の指図堂。だから法然上人の絵がまつられているわけですね。
他の紅葉の名所みたいなハデさはないですが、落ち着いたお堂をバックに「品のいい」モミジを見られます。人も少なくて、「紅葉の穴場」と言えるでしょう。知っているだけで、奈良のツウになったような気分になれるスポットです。